『教行信証』について

教行信証』は宗祖親鸞聖人の主著で、その正式な名称を『顕浄土真実教行証文類』という。

書誌的な背景

教行信証』はどのような構成ですか?

以下のような構成です。

  • 顕浄土真実教行証文類序(総序)
  • 顕浄土真実教文類(教巻)
  • 顕浄土真実行文類(行巻)←末尾に正信偈
  • 顕浄土真実信文類序(別序)
  • 顕浄土真実信文類(信巻)
  • 顕浄土真実証類(証巻)
  • 顕浄土真仏土文類(真仏土巻)
  • 顕浄土方便化身土文類(化身土巻)←末尾に跋文

読み方は一定ではなく、伝統的に、真宗大谷派(お東)では「きょうのまき」「しんぶつどのまき」と読み、浄土真宗本願寺派(お西)では「きょうかん」「しんぶつどかん」と読むことが一般的。

教巻, 行巻, 信巻, 証巻, 真仏土巻, 化身土巻の六巻を中心とし、最初に総序を置き、行巻の最後を正信偈で結び、信巻の最初に別序をおき、化身土巻の最後に全巻の内容をむすぶ跋文(後序, 流通文などとも)が置かれている。

問 どのような古写本が現存していますか?

以下の三本が有名です。

問 板東本の特徴は?

真宗大谷派東本願寺)に伝わる、現存唯一の宗祖直筆の教行信証。かつては坂東報恩寺に所蔵されていたことから「坂東本」と呼びならわす。

聖人自身の長年の推敲の跡があり、決して読みやすいものではない一方、宗祖の思索を感じることが出来る。

総序および教巻の一部が欠損している。

東本願寺出版編『顕浄土真実教行証文類翻刻編)』に丁寧に翻刻されているので参照されたい。

西本願寺本の特徴は?

浄土真宗本願寺派西本願寺)に伝わる写本。

整っていて読みやすい。かつては宗祖直筆の清書本だと言われていたが現在では否定されている。

高田専修寺本(高田本, 専修寺本)の特徴は?

真宗高田派専修寺)に伝わる写本。

その他概論

問 書名はどういう意味ですか?

  • 顕はあきらかにする。
  • 浄土は浄らかな土。本書では特に阿弥陀仏の西方極楽のこと。
  • 真実はまことなること。
  • 教行証とは仏道体系のこと。
  • 文類は要文類聚と理解され重要な文章を集めたもののこと。

最初の動詞「顕」がどこにかかっているのか親鸞自身が述べていないのでいろいろな理解がある(浄土をあきらかにする真実の教行証の文類か、浄土の真実の教行証をあきらかにする文類か、はたまた...)

英訳では「A collection of passages that clearly show true and real teaching, practice, and enlightenment in the pure land way.」と呼ばれる。直訳すれば「浄土教(浄土の道)の真実なる 教(教え)・行(実践)・証(さとり)を明確に示す文類(文章を集めたもの)」といった感じか。