浄土三部経

かきかけ

このページでは「浄土三部経」について詳しく掘り下げていく。

経典を読むということ

問 経典(お経)とは何ですか?

経典は、釈尊の言葉を仏弟子たちが書き留めたものです。釈尊は対機説法という方法で膨大な教えを口頭で説き述べられました。釈尊亡きあと、二度の結集(けつじゅう)を通して仏弟子たちの耳の底に留まっていた言葉がまとめられました。これを文字に書いたのが「経典」です。

その文字はサンスクリット語梵語)でしたが、チベット語・中国語などに訳され各地に伝わりました。日本には、主に中国語訳された漢文が伝わり、これを読誦することが多いです。

※なお、中国・朝鮮半島・日本へ伝わった大乗仏教の大乗経典は、歴史的事実としては後の時代の創作であり、結集を通じてまとめられたものではありません。

問 経典はどう読めばいいですか?

漢訳されている経典の意味を日本人が確かめる場合、まずは書き下しにする必要があります。平易に説明する参考書も様々にありますが、まずは本文に触れてみることが大切です。

また、東アジア仏教では、伝統的に「三分科法」で経典が読まれてきました。

問 三分科法とは何ですか?

釈道安(312~385)が考案したと伝わる(諸説あり)、東アジア仏教における経典の解釈方法。

普通、経典全体を序分(じょぶん)・正宗分(しょうしゅうぶん)・流通分(るづうぶん)と三つに分ける。

問 序分とは何ですか?

経典の最初の部分で、経が説かれる由来や因縁が述べられる。

普通「証信序」と「発起序」の2つに分けられる。

証信序はいずれの経典もほぼ同じ構成で、信成就・聞成就・時成就・主成就・処成就・衆成就の六成就を明かす。

発起序は経が説かれる固有の事情を明らかにする。

浄土三部経の概要

浄土三部経とはなんですか?

阿弥陀仏の浄土を主題に説かれる3つの経典のこと。

即ち

の3経典のことです。

浄土三部経はどのように選ばれましたか?

法然上人が主著『選択本願念仏集』で明らかにしました。

初めに正しく往生浄土を明かす教といふは、いはく三経一論これなり。「三経」とは、一には『無量寿経』、二には『観無量寿経』、三には『阿弥陀経』なり。「一論」とは、天親の『往生論』これなり。あるいはこの三経を指して浄土の三部経と号す。」(『選択本願念仏集』『真宗聖教全書』所収, 大八木興文堂, 1941, p.931)

以上のような文章です。

仏説無量寿経』とは

※ 本原稿では、異訳を含めたすべての無量寿経のことを<無量寿経>、康僧鎧訳を『無量寿経』と書き分けて区別する。

問 題号はどういう意味ですか?

「仏説」は釈尊の真説であることをあらわす言葉。

無量寿」は阿弥陀仏(アミターバ、アミターユス)のことで、つまり阿弥陀仏のことを指す。

三部経の中で最も分量が多いため『大経』ともよばれる。また、上下二巻に渡ることから『双巻経』という呼び方もある。

問 大経の書誌は?

この『仏説阿弥陀経』は、サンスクリット原本、チベット語訳本、漢訳本が現存しています。

また、漢訳は伝統的に五存七欠といわれ、以下の五種類の翻訳が伝わっています。

  1. 阿弥陀経(仏説阿弥陀三耶三仏薩楼仏檀過度人道経)…2世紀後半~3世紀前半
  2. 平等覚経(仏説無量清浄平等覚経)…3世紀中頃~4世紀後半
  3. 仏説無量寿経…5世紀前半
  4. 無量寿如来会…8世紀前半
  5. 荘厳経(仏説大乗無量寿荘厳経)…10世紀末

真宗では康僧鎧訳の『無量寿経』を正依の経典とし、教学の基本におき、法要において読誦ます。また、それ以外(異訳経典)を傍依としてしばしば参照します。それぞれ若干の違いはありますが、全体的な構成に大きな差はありません。

1・2および3・4は特に似ている面が多く、翻訳年代も近いことから、それぞれ「前期無量寿経」「後期無量寿経」などと呼ばれることもあります。

問 大経は親鸞思想でどう受け止められていますか?

親鸞思想では、この経典を真実教とし、この経典を説くことが釈尊の出世本懐であると理解される。(なお、通仏教において、釈尊の出世本懐は『妙法蓮華経』を説くことである。)

それ、真実の教を顕さば、すなわち『大無量寿経』これなり。この経の大意は、弥陀、誓いを超発して、広く法蔵を開きて、凡小を哀れみて、選びて功徳の宝を施することをいたす。釈迦、世に出興して、道教を光闡して、群萌を拯い、恵むに真実の利をもってせんと欲してなり。ここをもって、如来の本願(ほんがん)を説きて、経の宗致とす。すなわち、仏の名号をもって、経の体とするなり。」(『教行信証』「教巻」、『真宗聖典』p.152)

仏説観無量寿経』とは

『観経』と略される。漢訳本以外のものが見つかっておらず、本文の特徴からも文献学的見地からは中国撰述説が有力視されている。

親鸞思想では『大経』の第十九願(至心発願の願)を根拠に読まれる。

仏説阿弥陀経』とは

『小経』と略される。

親鸞思想では『大経』の第二十願(至心回向の願)を根拠に読まれる。